2006年05月25日

日本沈没

21世紀の「日本沈没」を
樋口真嗣はリアルに描けるか?!


【警告】この文章には映画「ローレライ」に関するネタバレが含まれますので、読まれるときはご注意ください。

1973年に出版された「日本沈没」は、日本SF界の巨匠と言われる小松左京の原作で、400万部近いベストセラーとなった小説である。
そして、この作品を原作に東宝が映画化。「ゴジラ」を生んだ東宝だからできた特撮パニック大作として、興行収入40億円の大ヒットとなったようだ。
監督はその後「八甲田山」を描いた森谷司郎、脚本は「白い巨塔」「砂の器」で有名な橋本忍、キャスティングも豪華で、深海潜水艦・わだつみのパイロット小野寺俊夫に「仮面ライダー」でおなじみの藤岡弘、田所博士に小林桂樹、救命隊員の阿部玲子にいしだあゆみ、その他にも政府要人に、二谷英明、村井国夫、夏八木勲、極めつけは総理大臣に丹波哲郎である。

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ストーリーは、Wikipediaから抜粋。
地球物理学者である田所雄介博士は、地震の観測データから日本列島に異変が起きているのを直感し、調査に乗り出す。潜水艇乗りの小野寺俊夫、助手の幸長信彦助教授と共に伊豆沖海底に潜った田所は、海底を走る奇妙な亀裂と乱泥流を発見する。異変を確信した田所はデータを集め続け、一つの結論に達する。それは「日本列島は最悪の場合、2年以内に地殻変動で海面下に沈降する」というものだった。
最初は半信半疑だった政府も、紆余曲折の末、日本国民と資産を海外へ脱出させる「D計画」を計画するが、事態の推移は当初の田所の予想すら超えた速度で進行していた。
相次ぐ巨大地震、火山噴火によってズタズタになっていく日本列島で、死に物狂いで押し進められるD計画。果たして日本人の運命は…。

ということで、1億の日本人のうち1千万しか生き残れないぐらいの規模の大災害で、日本列島は海に沈んでしまうという壮大なストーリーである。

この映画が、いよいよリメイクされることになった。
1999年に一度松竹が「ゴジラ」を監督した大森一樹を起用してリメイクしようとしたが、当時資金難に喘いでいた松竹としては資金調達できず断念している。

そして、結果的にこのリメイク話は元の配給会社である東宝に戻ってきた。製作には最近フジテレビに対抗して映画に力を入れているTBSが加わり、そして監督は「ゴジラ」ではなく、「ガメラ」を特撮監督した樋口真嗣が担当することとなった。

樋口真嗣は、もともとエヴァンゲリオンの庵野と仲良しで、だからアニメに造詣が深い。庵野が設立したガイナックスにも参加している。映画には「ゴジラ」の怪獣造形に携わり、特撮監督として「ガメラ」に関わる。
映画監督としては、今回が3作目。1作目はミニモニ主演のアイドル映画、2作目が「ローレライ」となる。

この樋口という監督がどのような映画を作るのかを知るためには、やはりこの「ローレライ」を観なくてはどうしようもない。ということで、ようやく観たのでそのレビュー。

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この「ローレライ」は、福井晴敏の原作で、彼は「亡国のイージス」「終戦のローレライ」「戦国自衛隊1549」と立て続けに映画化されている。原作を読んではいないが、この福井という男、ぼくの2歳上で、ガンダム世代で、冨野由志幸を神と仰ぐ新進気鋭の作家だけに、同世代のぼく的にあなどれない感じである。

その「ローレライ」だが完全に意表をつかれた。
想像していたものとはまったく異質の、近未来SFのジャンルに近い展開や設定である。いわゆる偽史物にあるオカルト的な要素も多用されている。

終戦間近の8月、広島に原爆が落とされたことで日本は壊滅の危機に陥ってた。そして次の原爆が落とされるという情報をうけ、秘密裏に隠密作戦が開始されようとしてた。作戦は、次の原爆を阻止すべく南太平洋上に浮かぶ原爆搭載機の発進基地を単独で奇襲すること。発動者は、帝国海軍の軍司令部作戦課長の浅倉大佐(堤真一)。その武器は、ドイツから接収した戦利潜水艦<伊507>で、この中には特殊兵器“ローレライ”が搭載されていた。
潜水艦の館長に任命されたのが絹見少佐(役所広司)、彼が個性の強い(さすがフジテレビジョン、これだけの役者よく集めたよなあって感じの)乗組員たちとともに最後の戦いに挑む。

しかし、話はこれから2転、3転する。
ひとつは“ローレライ”といわれる秘密兵器が実はナチスドイツの人体実験で生まれた人間兵器であり、それが年端もいかない少女であること。実は特攻隊との対比としての人型兵器をここで持ち出し、効果的で意味深なパラドックスを作っている。
そして、作戦が日本を救うどころか、日本を滅亡させるためのシナリオであったこと。
など、なかなか一筋縄ではいかない、スリリングなストーリー展開である。

肝心の戦闘シーンや“ローレライ”が映し出すレーダーのCGなども
比較的うまく仕上がっていて、日本のVFXも少しずつだが見れるようになってきた気がする。

どこかの解説にもあったが、福井の描く世界はガンダム世代よろしく、戦争状態の中の群像劇が多い。しかし、彼が右翼だの愛国心だのに傾倒しているとは思えないし、この「ローレライ」にしても、見方によれば戦争の残酷さを描ききれていると思う。

“ローレライ”の少女パウラは、多くの死に直面することにより精神的なダメージを受ける。そのため、最後の戦いのときには無血の戦いに挑み勝利する。死や殺戮がきちんと悪として描かれていることに、ぼくはこの映画を評価したいと思う。

まあ、突っ込みどころは結構あって、
ツマブッキーのいつものウブさ加減とやっぱりパウラもってっちゃうあたり、いい役者です。
でも、ツマブッキーの親友の佐藤隆太の死は必要だったけど、殺し方はいただけなかった。
それに比べギバちゃんの殺し方はイタイけどかっこよかった。
ピエール瀧は微妙な感じでしたね。
あと、パウラ役の香椎由宇はドイツ人を祖母を持つクオーターってことですが、実際はアメリカ人を祖父に持つクオーターなんだそうです。

ということで、話は元に戻って「日本沈没」。
この「ローレライ」の完成度でいけば、本作もあなどれないと思う。
ただVFXがどこまでリアリティを持てるかは微妙かもしれない。
今回の配役は、小野寺俊夫に草なぎ剛、田所博士に豊川悦司、阿部玲子に芝咲コウ、総理大臣に石坂浩二といった面子。
草なぎと柴咲は「黄泉がえり」以来だがが、きちんと絡むのは初めてじゃないかな。「黄泉がえり」もどんでん返しがとてもよく、阿蘇のロケもよく、秀逸な作品だった。豊川悦司の田所博士は、むむむ…だが、変人という意味でははまるかもしれない。
阪神大震災や中越地震、福岡西方沖地震など、比較的大きな地震を立て続けに経験し、災害に対するリアリティを植えつけられた日本人にとって、今回の「日本沈没」は30年前よりもかなりリアルに感じることのできる環境にある。
だからこそ、映像にしろ演出にしろリアルさが要求されるのは間違いない。
これらの製作陣、出演陣でどこまでできるのか…

だからこそ監督である樋口真嗣の力量が試されている。

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原題:日本沈没
監督:樋口真嗣
プロデューサー:中沢敏明
原作:小松左京
脚本:加藤正人
音楽:岩代太郎
特技監督:神谷誠
特技統括:尾上克郎 
出演:草なぎ剛、柴咲コウ、豊川悦司、大地真央、及川光博、石坂浩二
日本公開:2006年7月(東宝)

公式サイト:http://www.nc06.jp/
posted by Kadwaky悠 at 19:03| ロサンゼルス ☀| Comment(2) | TrackBack(1) | 邦画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
はじめまして。
TBありがとうございます。

>草なぎと柴咲は「黄泉がえり」以来だがが、きちんと絡むのは初めてじゃないかな。
 ドラマも含めて、絡みのあるシーンは初めてですね。

 VFX…特殊効果は主題を支える柱の一つですね。
 その辺りは監督さんを信頼しています。

 でも現代版を作る上でのポイントは、VFXが絡む『現代の生活水準の変化』もありますが、
『社会の変化』、『国民性の変化』も重要ではないでしょうか。
 それらもきちんと踏まえ、
ちゃんとVFXと相乗効果を引き出せるのかが、
成功の要因かな、などとも思います。

 主役俳優のファンとしては、何よりも主役が魅力的に映っていてほしいかな(←本音)。
 でもできれば、作品そのものも面白い物であった欲しいと願うばかりです。
Posted by Urara at 2006年05月25日 20:55
新着からきましたー!足跡ですっ!☆でゎ
Posted by はちみちゅ at 2006年05月26日 04:26
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『日本沈没』リメイク
Excerpt:  何故かすごく聞き覚えのあるタイトルの作品に、まさか草なぎ君が関わると思いませんでした。 今回は原作者のご指名だそうです。これまでの仕事を観てそう思ってくださったというのは、草なぎ君にとって光栄ですよ..
Weblog: GOlaW(裏口)
Tracked: 2006-05-25 20:36
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